痛みを軽減する(2)

 =セロトニン、「ゆっくり呼吸法」

 痛みを軽減する治療を医者に依頼すればいいが、薬を服用しても、それでも、とれない痛みがある場合、何かくふうできないものか(呼吸法などで)可能性をあれこれ考える。
 痛みを軽減するために、薬が使われることがあるが、すべての人に、元来、備わっている痛みの軽減の仕組みがある。一つは、次であった。  もう一つの、すべての人に備わっている痛み軽減装置は、セロトニン神経の痛み抑制である。
 
セロトニンを分泌する軸索が伸びる(縫線核から)
 


脳に痛みを伝える2次ニューロン


(d)▽
(省略)(a)触覚を伝えるニューロン繊維
=============
<========= ===● (c) 
 
(b)
(脊髄後角)
=============
痛み刺激を伝える1次ニューロン繊維

縫線核からのセロトニンが痛みを抑制

 脊髄後角のところで、触覚が同時に起きると、痛みの第二次ニューロン(c)の痛みを半減させるが、同じく脊髄後角のところに、縫線核から軸索が降りてきていて(d)セロトニンを分泌して、痛みの第二次ニューロン(c)の興奮を抑制しようとしている。セロトニンは、うつ病の人やパニック障害の場合に、活動が低くなっているので、抗うつ薬を服用すると、症状が軽くなる。そのセロトニンを合成しているのは、縫線核であるが、縫線核からは、大脳皮質、前頭前野、大脳辺縁系にも、軸索が伸びてセロトニンを脳中に送り込んでいるが、縫線核からは、下にも、軸索が伸びて、脊髄後角に達して、痛みを抑制している。 (参照:「感覚の地図帳」講談社、82頁)

 セロトニン神経が活性化していると、痛みがある程度、抑制される。しかし、それが弱ると、痛みを感じやすくなる。うつ病の人には、頭痛、胸痛、腹痛などの症状がある場合がある。運動をしない子どもも、痛みにさわぎやすい。
 柳沢桂子さんは、原因不明の痛みがあった時に、医者に抗うつ薬を処方してもらって症状が軽くなったといっている。
 これが、持って生まれた痛み抑制装置であるが、これが弱った時に、薬によらずに、活性化する方法がある。病気で生じる「痛み」で、治療してもとれない痛み、原因不明の痛みがある場合、少し、やわらげる方法がある。呼吸法を行って、セロトニン神経を活性化する方法、注意を分散する方法、注意を他に転じる方法などである。これらは、自己洞察法の技法にあるが、脳神経科学の知見からも、痛みの軽減を説明できそうである。