注意を他のものに向けて痛みを軽減する

 脊髄後角に伝えられた、痛みの刺激は、その後、2つの経路で、脳に伝えらえて、痛みを感じる。痛みがある時に、注意が、他のものに向けられると、痛みが軽くなる。  脊髄後角に伝えられた、痛みの刺激は、その後、2つの経路で、脳に伝えらえて、痛みを感じる。
  体性感覚野 前部帯状回
  外側視床 内側視床
脊髄 後角
痛み
(図) 痛みの大脳への投射経路

注意を痛みから他のものに向けると痛みが軽くなる

 脊髄後角に伝えられた、痛みの刺激は、その後、2つの経路で、脳に伝えらえて、痛みを感じる。痛みがあっても、注意を何かに(テレビを見るのでも、本を読むのでも)向けていると、痛みが軽く感じられる。
 サルを使った実験によって、このことが確認された。痛み刺激を与えて、同時に、光刺激による報酬(エサをもらう)を与える実験をしたところ、前部帯状回の活動が低下していた。このことは、痛み以外の他のものに注意を移すと前部帯状回が活動性を低下させて、痛覚が減弱することを示しているらしい。
 別の記事で、マサチューセッツ大学医療センターの瞑想法を利用したストレス緩和法を紹介した。 その結果、痛みの緩和については、次の効果が報告されている。  マサチューセッツ大学の技法は、「ゆっくり呼吸法」ではなく、注意が痛み以外のことに向けられる訓練によって、上記の作用によって、痛みの軽減のスキルを会得したためではないかと私は考える。
 私どもの、自己洞察法では、「ゆっくり呼吸法」または腹式呼吸法を行いながら、注意を痛みや不安などから、呼吸や視覚に強く注意を向ける訓練を指導するので、上記の軽減効果や、ほかに、セロトニン神経(縫線核)の活性化によって、痛みや不安の軽減に効果があるのだろうと推測している。痛みや不安は、痛みのある種々の病気(がんなど)、リハビリの場において、患者が苦痛を感じるから、「自己洞察瞑想療法」を試していただきたいと思う。マサチューセッツ大の場合のような、効果がみられる可能性がある。 (続)