薬物療法の現状・薬物療法について考える

行政は業界より=うつ病、自殺防止対策も

 心の病気のことではないが、医学博士、小内亨氏は、病気や健康に関連する情報にかたよりがあるので、患者さんや一般の消費者が正しい健康・医療情報を得られるように、情報を集めて公開していくという。こんなことを言っている。  うつ病、自殺問題、パニック障害などの心の病気の対策、治療法、情報も、行政は業界寄りである。 行政は、特定業界の利益よりでなく、国民よりであってほしいが、どうしても業界よりになる。行政は、対策をとる時、組織、グループ、専門家に頼るしかない。心の病気の患者、家族は、結集していない。ばらばらである。行政は、強い結束を持つ医師グループ、製薬業界と協議する。今の医療制度では、患者が治らなくても、薬物療法を行えば、医者と製薬会社には、利益が得られる。心理療法は時間がかかるのに、診療報酬が少ない。だから、医者としては、心理療法よりも、薬物療法の方が利益になる。製薬業界は、心理療法では、全く利益にならないから、薬物療法のみを推進する。患者が治らなくても、収入にはなる。
 今の制度では、うつ病、自殺問題の取り組みに関しては、医師グル−プや業界側には、薬物療法以外の療法を積極的に推進する動機は働かない。うつ病が治らないで「ひきこもり」が続き、自殺を減少させる対策が強い効果を発揮しないのは、制度的な問題である。
 そういう中にあって、心理療法を行っている医者は、良心的である。時間がかるのに、利益は少ないが、心理療法を行う。医師の良心である。もちろん、薬物療法を研究して、薬物療法で治していく医者も良心的である。だが、長く薬物療法を行っても治らず、いつまでも、薬物療法を継続するのは、あやしくなる。うつ病、パニック障害の他の療法について、心理療法について不勉強でもある。「あなたの場合、種々の薬物を変えてみたが、効果がないようだから、薬では治りにくいのかもしれない。心理療法をためしてみたらどうでしょうか。」という助言をしてくれないのは、なぜか。欧米では、認知行動療法、対人関係療法、ストレス緩和プログラムなどで、うつ病やパニック障害が治っている例が多くなっていて、日本でも始まっている。不勉強ではないか。不誠実ではないか。患者本位になっていない。代替医療のインフォームド・コンセントが十分ではないと思われる。他の病気ならば、一つ薬物療法が効かない場合、他の薬物に変更し、他の種々の療法に変えることを助言するのに、なぜ、心の病気の場合、さしたる効果が現れない患者でも、いつまでも薬物を投与し続けるのだろうか。何度も繰り返すように、効果的な心理療法があるのに。