うつ病の診断書、「表現弱める」医師9割 復職に配慮
働いている人を診断する際、本当は「うつ病」なのに、診断書に「抑うつ状態」「心身疲弊」などと軽い症状に書き換えている医師が約9割に上る。
診断書、一種の偽造=正確な病名を書くと、患者が勤務先から不当な扱いを受けるから
働いている人を診断する際、本当は「うつ病」なのに、診断書に「抑うつ状態」「心身疲弊」などと軽い症状に書き換えている医師が約9割に上る。
うつ病という診断書を提出したら解雇された人がいる。解雇されず、休職して治療しても、復職に理解がない企業がある。 うつ病と診断されると職場復帰が難しくなるのではないか、と考える患者の立場を考慮しているという。
復職条件については、96%の医師が日常生活に支障がない「寛解状態」で可能と考えているが、74%の医師は会社側から「完全治癒」を求められていた。ただ、うつ病は再発しないと断言することが難しく、「完治」の判断がしにくい。 会社と契約している産業医は、復職には完治という厳しい態度をとるので、患者の復職を困難にする場合もある。
復職を拒否されて、再発した人もいる。 労働相談に応じている日本労働弁護団は「復職を望んでも会社側が拒み、休職状態を長引かせて解雇に追い込むケースがここ2、3年目立っている」という。
だが、「心の病」の実態の把握がぶれ、本人の治療や企業・周囲の理解を妨げる危険もある。
関西労災病院心療内科・精神科の柏木雄次郎部長らが昨年2月、全国の心療内科と精神科の開業医ら約3000人を対象にアンケートを郵送し、匿名で846人から回答を得た。
(詳細は、朝日新聞2005年5月18日、概要=こちら→
asahi.com=05年5月18日
)
厚労省の02年の調査では、仕事で強いストレスを感じている労働者は全体の6割を超えた。うつ病患者を含む精神障害者の労災申請数は03年度は438件、認定数は108件といずれも過去最高を更新している。
(大田評)
弱い患者側の立場が守られていないことが気がかりである。
復職条件については、治療を行う医師が復職可能と判断しても、会社と契約している産業医は、まだ完治していないとして、復職できない。産業医は、企業から報酬を得る関係上、会社側の意向を尊重せざるをえない。厳しい態度をとるので、患者の復職を困難にする場合もある。会社ごとに契約する産業医制度にも法的な改善が必要であるのかもしれない。日本では、うつ病の患者が結束して、関係機関に改善を求める市民運動が発達していない。
企業側の偏見、厳しさがあるので、うつ病であることを患者が隠す、治療を十分に受けられない、治療しても復職を困難にする。こうして、うつ病の悪化、再発、自殺という環境が改善されない。
寛解したのに、復職できないことがわかると、再発する例がある、と紹介されていることでわかるように、薬物療法では、完治が難しい。寛解であったのに、復職拒否により再発ということは、うつ病は心理的な要因が大きいという証拠であり、心理的な対処法が会得されておらず、薬物療法の限界を示す証拠でもある。
企業側は、社員の利益を優先しない。復職を拒む時に、産業医の判断が影響する。産業医は完治を判断せず、会社側の厳しい意向をくんで復職を認めないことに利用されることもある。こういう産業医制度の改革、企業の側の理解・改善には、患者の利益をはかる法的整備を含めて相当の期間がかかりそうである。
そういう環境整備、企業の理解協力が実現するまでは、うつ病になったら、欧米のように、心理療法のカウンセリングを受けて、心理療法で治す(これほど患者が不利益を受けるのならば診断書は「うつ病」としないことはやむをえない)。また、うつ病にならないように予防を学ぶことを重視するという対策を一人、一人が真剣に考えるべきである。
siryou