薬でうつは治るのか?(2)=うつ病が治りにくい要因7つ
=書籍紹介「薬でうつは治るのか?」片田珠美、洋泉社(新書)、780円+税
薬物療法を受けても、うつ病が治らない、復帰しようとしたら失敗する、再発を繰り返す、こうしたことが問題となっています。そのわけが、この本を読めばよくわかる。そんな本です。
精神科医、片田珠美氏の本の紹介です。
うつ病の遷延化の要因
うつ病が長引く要因として多くの研究で指摘されているのは、(項目だけ記述)
- (1)高齢
- (2)病前性格のかたよりや人格障害
- (3)家族、とくに配偶者の問題
- (4)困難な生活状況
- (5)喪失体験
- (6)早期復帰の失敗
- (7)不適切な治療:不適切な薬物療法、精神療法的介入など。(31頁)
「ここで重要なのは、遷延化の要因として挙げられているもののうち、F不適切な治療を除くと、その多くは、医学的に、少なくとも薬の作用によって変えることはできないということである。」(31頁)
「問題は、薬があまり効かないタイプのうつ、いわば<純然たるうつ>ではないタイプの患者さんにも、抗うつ薬が処方されているという現状である。当然、症状はなかなか改善しないため、薬の種類も増えていくが、それでもなかなかよくならず、患者さんは「いつまで薬を飲まなければならないのだろう?」あるいは「いつになったら治るのか?」という疑問や不安を抱くことになる。」(35頁)
うつ病の患者の中には、薬物療法でも治らないでながびく人が多いのだが、医者に行くと、症状のみを聞いて、原因らしいことを聞かず、抗うつ薬を処方する。だが、うつ病の患者に、上記の7つの要因があれば、薬物療法だけでは、治りにくいというのである。
治りにくいわけには、ほかにも理由がある。薬物療法はセロトニンやノルアドレナリンに作用する薬であり、うつ病は、直接には、そういう神経の作用とは異なる部位が変調を起こしていて、セロトニン神経に作用するだけでは治らないからである。
たとえば、いじめられてうつ病となり、自殺する子どもがいるが、いじめの状況を変えずにいて、抗うつ薬で、うつ病が治るだろうか。
がんになってうつ病になる人も多い。介護疲れうつ病も多い。借金苦によるうつ病、夫婦の不和によるうつ病、こういううつ病が抗うつ薬だけで治るだろうか。対人関係がうまくいかないとか、ほかの精神疾患にもうつ状況があるが、抗うつ薬だけでは治りにくい。
こうして、多くの背景のあるうつ病患者に、ほとんどわけを聞かず、症状だけを聞いて、抗うつ薬を処方する。その後、2週間ごとに診察に行っても、ただ症状の変化をきかれるだけで、5分から10分で終わる。こうして、7つの要因にあたる患者は、治らない人が出てくる。なかには、副作用で悩む人も出てくる。
(続)