薬でうつは治るのか?(5)=薬を飲み続けて治らない患者
=書籍紹介「薬でうつは治るのか?」片田珠美、洋泉社(新書)、780円+税
日本では、医者は症状だけ聞いて、うつ病だとわかると、原因にかかわらず、薬物療法を開始する。
だが、心因性うつ病は、薬だけでは治りにくいので、長く薬を服用しても治らない患者も少なくない。
精神科医、片田珠美氏は、執筆の動機を、次のように書いている。
「こうして、一人の臨床医として患者さんの訴えに耳を傾けているうちに、浮かび上がってきたのは、抗うつ薬、とくにSSRIを何種類か処方されており、場合によっては、相当な量をかなり長期間にわたって服用している患者さんが少なくないという現状である。しかも、「薬が効いているのかいないのかわからない」「いつになったら治るのか」といった不満や不安を訴えながらである。このような現状を前にして、現在の薬物療法中心の治療には少なからぬ問題があると感じるのは当然ではないだろうか。」(222頁)
本やマスコミでいうほどには、「うつ病は休養と抗うつ薬で完治する」という実情ではない。その問題をわかってもらいたいために執筆された。こういうことをわかって、患者も治療法を選択し、自分がうつ病になった原因と対決しなければ、同じようなはめになるおそれがあるだろう。
(続)