薬でうつは治るのか?(7)=患者はどうすればいいか
=書籍紹介「薬でうつは治るのか?」片田珠美、洋泉社(新書)、780円+税
日本では、医者は症状だけ聞いて、うつ病だとわかると、原因はきかずに、薬物療法を開始する。
心因性うつ病は、薬だけでは治りにくいので、長く薬を服用しても治らない患者も少なくない。医者も問題だが、患者も問題だ。
精神科医、片田珠美氏は、執筆の動機を、次のように書いている。
患者も問題だ
「また、精神科医が表面に現れた状態像だけに注目して、根底にある病理を見きわめようとせず、漫然と抗うつ薬を投与している現状には大いに問題があるが、患者さんの方にもまったく問題がないわけではない。心療内科などを受診なさる患者さんは「気分が落ち込む」「気力がない」などと訴えて、「いい薬があると聞いたので、薬でどうにかしてほしい」と要求されることが少なくない。だが、魔法の薬はない。性格を変える薬はないし、無条件で元気にしてくれる薬はない。多幸感、快感を与えてくれるのは、麻薬か覚醒剤、もしくは最近はやりの脱法ドラッグだけである。しかも、依存症という高い代償つきで。もし、」あなたが精神に作用する万能薬があると思っているとすれば、単にそのような幻想をかき立てる宣伝に影響されているだけである。」(214頁)
患者にも、問題がある。「心因性うつ病」は、薬を服用しても、せいぜい、もとのレベルにもどる(実際には、セロトニン神経の再取り込み阻害の作用であり、根本的な活性化ではないが)。前頭前野の機能が回復している保証はない。そこには、また、ストレスがある。ストレス対処法を身につけていなければ、再発するのが当然と考えるべきだろう。
うつ病がながびく人は、心因性うつ病の可能性があるので、片田氏の注意3つを理解して、これまでとは、違う治療行動も考えるべきでしょう。
患者はどうすればいいか
片田珠美氏は、薬物療法を否定してはいない。患者は、薬のほかにも、努力すべきことがある。3つを「きちんと認識しておく必要があるだろう。」(215頁)(項目だけあげておきます)
- (1)薬ですべて解決できるわけではない。
- (2)薬には副作用がある。
- (3)薬についての情報を充分与えられたうえで、消費者である患者が選択すべきである。
「もし、あなたが治療方針や薬の副作用などについて尋ねても、主治医があまり答えてくれない、必要な情報を与えてくれないとすれば、あまり信用しない方が賢明だろう。」
(215−6頁)
患者にも問題がある。カウンセラーの心理療法は、保険の対象ではないから、患者が少なくて、収入が多くないから、豪華な建物で営業はできない。患者の中には、豪華な建物で立派な看板を立てて営業する医者を信用して、小さな家や借用の施設で心理療法のカウンセリングをするカウンセラーを信用しない。心因性うつ病に、心理療法を受けないから、治りにくい。従来の、考え方、価値観、反応のしかたなどが、うつ病を発症させたのが、心因性うつ病だが、うつ病になってからも、考え方などを変えないようであれば、治りにくい。ストレス、環境の方が変わらないのであれば、患者の方が変わらないと、なおりにくい。葛藤が持続するから。
認知療法、行動療法は、わづか、2、3カ月の課題実習で、ずいぶん軽くなるのに、それをしない。自分を甘やかす。薬は何年も飲み続ける(通院の時間の膨大さ、生き生きと活動できない時間の無念さ)のに、カウンセリングの課題は、3カ月も継続しない。
うつ病になった人、治らない人、および患者は、片田氏の注意を理解して、これまでとは、異なる行動も考えたほうがよい。貴重な人生の時間をとりもどし、いつ何がおきるかわからない「いのち」を大切に。
(続)