腹式呼吸はセロトニンを分泌
ゆっくりした呼吸は血中の炭酸ガスの濃度が高まりセロトニンを分泌
ゆっくりとした呼吸や腹式呼吸を行うとセロトニンが分泌される。これは、 セロトニン神経に作用する薬を服用するような効果があることになる。 腹式呼吸のすぐれた点を理解して、実践する動機づけにする。
うつ病やパニック障害などの治療に用いられる抗うつ薬はセロトニン神経に作用する。似たような作用をするが、薬物療法よりよい。薬物療法は、再取り込み阻害の作用であるが、ゆっくり呼吸は、神経細胞の活性化であるから。
高田明和・浜松医科大学名誉教授が、紹介している。
自律的な呼吸=呼吸中枢からの無意識の運動
延髄と橋に、呼吸中枢があり、自動的に興奮と休息を繰り返す。
吸う中枢が興奮すると、この命令が外肋間筋と横隔膜に伝わり、胸腔が拡大して空気が肺に入る。胸腔が拡大すると、吸気中枢の命令がなくなり、外肋間筋と横隔膜が弛緩し、肋骨の重さで、肋骨が下がり、胸腔が狭くなり、肺が押されて、空気は押し出される。
横隔膜が収縮すると、横隔膜が押し下げられて胸腔が拡大する。
外肋間筋が収縮すると、肋骨が引き上げられ胸腔が拡大する。
意識的な呼吸
無理に息をはく場合には、内肋間筋を収縮させて、肋骨を下げる。
腹式呼吸
腹部をゆっくりへこませていくと、横隔膜が上昇する。胸腔が狭くなり、肺が押されて、空気は押し出される。また、腹部がへこまされると、腸管が刺激されて、腸管のセロトニン神経が活性化される。腹部の力をゆっくりゆるめると、横隔膜が下がり、胸腔が広くなり、肺が膨らんで、空気が入る。
呼吸は自律神経の影響も相互に受ける
交感神経は呼吸中枢の興奮を高める。
呼吸をゆっくりにすると、視床下部の副交感神経を刺激して、心臓の活動が遅くなり、血圧が下がる。胃腸の働きを高め、消化、吸収を促進させる。つまり、休息の指令が全身に伝わる。
ゆっくり呼吸、腹式呼吸
呼吸をゆっくりすると、血中の炭酸ガス(二酸化炭素)の量が増加して苦しく感じる。
血中の炭酸ガスの量が増加すると、化学受容器が、それを検知して、縫線核を刺激してセロトニンを分泌させる。
これが、辺縁系にも分泌されて、精神が安定する。辺縁系は感情を起こすところである。
化学受容器
私たちの
頚動脈と延髄
には、酸素量が低下したことや、二酸化炭素が上昇したこと、そして血液の酸性度を感知する検知器があります。これを化学受容器といいます。この検知器が刺激されると呼吸が早くなります。この検知器は、主として二酸化炭素の量の増加に敏感です。ですから、運動したときに作られる二酸化炭素によって呼吸が速くなるわけで、酸素不足の影響は、それほど重要ではないということです。(7頁)
深い、ゆっくりした呼吸はセロトニンを分泌させる
深い、ゆっくりした呼吸
↓
血液中のCO
2
(炭酸ガス)の増加
↓
延髄下部縫線核のセロトニン神経の刺激
↓
↓
橋、中脳の
縫線核刺激
脊髄の横隔膜神経の
運動神経核の刺激
↓
↓
辺縁系へのセロトニン神経の活性化
横隔膜の呼吸運動促進
↓
精神的安定
「ストレスをなくす心呼吸」高田明和(浜松医科大学名誉教授)、リヨン社、P50。
注意! 注意!
誤解して炭酸ガスの多い空気を吸うようなことを決してしないで下さい。そんなことをしたら死亡するおそれがあります。効果があるのは、血液中の炭酸ガスの量です。また、あまりに、ゆっくりした呼吸も危険です。心の病気の方は、15秒から30秒に1回が限度だと思います。できれば、呼吸法でカウンセリングすることに熟練したカウンセラーの指導を受けるのをおすすめします。