セロトニン神経が活性化するのに3カ月かかる

 =自己受容体の数が減少するために3カ月

 東邦大学医学部・生理学第一講座(有田秀穂教授等)のHPに、セロトニン神経と痛み、セロトニン神経と腹式呼吸法(坐禅)の関係についての研究結果が記載されている。
 腹式呼吸法などのリズム運動によって、セロトニン神経が活性化するのには、3か月かかる。セロトニン神経の自己受容体の数が減少して、自己の抑制を解放するためであるらしい。

(18)「只管打坐と自己受容体」

(A)(要旨)
 セロトニン神経にはオートレセプターという機構が備わっています。セロトニン神経が興奮すると、オートレセプターを介して自己にネガティブフィードバックをかけ、増えた活動を抑えてしまうという、やっかいな特性です。このため、簡単にはセロトニン神経の活動レベルは高く維持し続けられません。オートレセプターを絶えず繰り返し刺激し続けてやると、やがてオートレセプターの数が適応性に減少していきます。 坐禅も継続して数週間もすると、オートレセプターの数が減少して、セロトニン神経の活動レベルが普段から高いレベルに安定することになります。坐禅はただひたすら継続してこそ意味がある、すなわち、道元のいう只管打坐ということは、セロトニン神経の自己抑制回路によって説明可能なのです。

(B)(HPから) (C)(考察)
 腹式呼吸法や坐禅は、その効果が現れるのに継続することが必要である。うつ病やパニック障害などの不安障害、心身症の人が、仏教カウンセリングで腹式呼吸法や坐禅をこころみる場合にも、指導を受けた後、毎日、実践してもらう必要がある。最低2カ月もすれば、症状が緩和されたのを実感できる。 たった1回でやめる人がいるが、そのような早期判断は、この有田教授の言葉で間違いであることがわかる。うつ病の人が、腹式呼吸法、自己洞察法(坐禅に似た心理療法)を開始しても、しばらく、それほど効果が感じられないが、カウンセリングを始めて2カ月たった頃、突然、「気分の好転」をいうクライアント(来談者)が多いのも、この理由によるのであろう。
 長く(正しい坐禅でなければならない)坐禅をしていると、セロトニン神経の オートレセプターの数が減る、それで、セロトニン神経の活動レベルが高く維持されるという。こうなると、力を入れなくても、坐禅も楽になるし、日常いらだち事、感情の爆発が少なくなるだろう。もう少し続けて6カ月〜1年ほどたつと、心の病気は治癒し、セロトニン神経が根本的に活性化しているから、再発の可能性が低くなる。ストレスに反応しすぎることも少なくなり、他の心の病気、心身症やがんの発病の確率も低くなるだろう(ストレスは免疫にも影響する)。正しい坐禅を長く継続する有効性が確認された。
 セロトニン神経には「自己受容体」があり、自己が自己を抑制する。そして、その抑制を解放するのは、知性によらず、腹式呼吸法などの実行である、という。人の真相、坐禅の真相を暗示して興味深い。
(参照)