パニック発作とセロトニン神経
東邦大学医学部・生理学第一講座(有田秀穂教授等)のHPに、セロトニン神経と痛み、セロトニン神経と腹式呼吸法(坐禅)の関係についての研究結果が記載されている。
有田教授らの研究から、腹式呼吸法などのリズム運動は、感情を制御するセロトニン神経を活性化させて、うつ病、自殺、パニック障害、摂食障害、あがり、子供などの「切れやすい」傾向、などを治癒させ、スポーツ・武道の向上を期待できるという。これは「パニック発作のメカニズム」である。
(12)「パニック発作との関係」
(A)(要旨)
パニック発作の場合には、窒息感という最も重い症状が現れます。実際に窒息状態にはなっていないのに、窒息して死ぬのではないかという恐怖に襲われます。酸素不足の状況が脳の入り口付近にある動脈のセンサーによって検知され、呼吸中枢のある延髄を介して、青斑核のノルアドレナリン神経に伝えられます。しかし、運動の開始や精神的な興奮など、いろいろな日常活動によって、軽い酸素欠乏は絶えず起こります。ところが、セロトニン神経の働きが弱っていますと、ほんの僅かの変化ですぐに窒息警報が発令されてしまいます。これがパニック発作のメカニズムです。
(B)(HPから)
「そもそも、窒息感がどういう機構で発生するのか、例えば、喉に餅を詰まらせた場合を想像して下さい。肺に空気が入って来ませんから、血液中の酸素がどんどん低下していきます。その異常は脳の入り口付近にある動脈のセンサーによって検知され、呼吸中枢のある延髄を介して、青斑核のノルアドレナリン神経に伝えられます。この神経は、前回の「あがり」の機構にも関係していたものですが、生体に加わるさまざまの危機に際して興奮し、警報を発する役目をしています。いわば、脳内にある危機管理センターのようなものです。」
「危機に際して警報を発令する場合、判定をどうするかというむずかしい問題があります。天気予報や地震などで警報を発令するときのむずかしさにも通じます。血液の酸素レベルが低下することは、窒息に限らず日常的に起こります。運動の開始や精神的な興奮など、いろいろな日常活動によって、軽い酸素欠乏は絶えず起こります。その度に窒息警報を出していてはたまりません。そこで、ノルアドレナリン神経の活動に対して、ある程度の抑制をかける微調整が必要となります。その役割をするのが、元気の神経であるセロトニン神経、ということになります。ちょっとした変化には動じない心の状態を演出してくれます。」
「ところが、セロトニン神経の働きが弱っていますと、ほんの僅かの変化ですぐに窒息警報が発令されてしまいます。これがパニック発作のメカニズムです。この考え方は「パニック発作の窒息警報誤作動仮説」としてクラインという精神科医によって提唱されたものです。パニック発作の治療にセロトニン神経を活性化する薬が有効であることからも、この説は裏付けられます。」
「なお、パニック発作を克服するには、元気の神経であるセロトニン神経を鍛えればよいわけで、ウオーキング、ジョギング、エアロビ、水泳、カラオケなど、いろいろな「息抜き」を含めたリズム運動の継続が有効です。」
(C)(考察)
腹式呼吸法や坐禅もよい。ふだんからリズム運動をしていると、セロトニン神経をきたえていくことになる。ある程度、セロトニン神経が活性化したところで、少しづつ「現実の場面」に近いところに出ていく(エクスポージャー法)ことで治すことができる。そして坐禅によって、ものごとの見方・考え方のかたよりを是正する心の探求をすれば(そういう自己洞察を織り込んだ坐禅ならば)、パニック障害の軽減に一層貢献する。人生上の他の出来事にも対処していく心がまえが養成されるだろう。
(参照)