帯状回の神経科学(6)
帯状回・ワーキングメモリや感情の抑制(1)=ワーキングメモリ・実行制御
=うつ病や不安障害(パニック障害、PTSD、対人恐怖など)治す心理療法(マインドフルネス、自己洞察瞑想療法)の検証
次の記事で、前頭前野とワーキングメモリについてみた。
ワーキングメモリは、私たちの瞬間々々の精神作用、行動を制御している。そのうち、実行機能が重要である。
実行制御は、次のような機能である。
「適切な判断や選択を行い、目的を達成するためには、外界でおこっている出来事のモニタリング、必要な情報へ注意を向ける、必要な情報の選択、長期記憶からの情報の取り出し、必要な情報の処理、必要な情報の出力、不必要な出力の抑制などが必要であり、これらのプロセスがうまく協調して働く必要がある。
また、外界の出来事のモニタリング機能一つをとっても、これをうまく行なうためには、さまざまな感覚系や運動系の強調が不可欠である。このように、ある目的を遂行するためにさまざまな機能系を協調して働かせる仕組みが実行制御であり、このような仕組みによって生み出される機能が実行機能である。」(1)
この実行機能がうまく働かないと、心の病気になる。または、非行犯罪を犯す。自分にとって、つらい状況がはいってくる。怒り、不安、恐怖、不満、イライラ、後悔、憂うつ、絶望、とまどい、など「感情」が起きる。その時に、(逃避、依存、他者攻撃、になるような行動をせずに)重要な情報に注意を向けて、心の病気や非行犯罪に陥らない方法を自分の記憶を照合して最も妥当な対処法をみつけて選択して、それを実際行動にださなければならない。
このように、瞬間瞬間の自分の刺激、環境を観察し、感情を抑制して、適切な対処法を検索し、選択して、行動指令を出す「ワーキングメモリ」の機能は、心の病気を治すのに、注目すべきである。心の病気の人は、この
ワーキングメモリ」の機能の変調がある。ワーキングメモリは、前頭前野が関与しているが、帯状回も重要な働きをしていることがわかってきた。
ワーキングメモリの機能を薬物療法によらずに、活性化して、うつ病や不安障害を治す、さらに、予防する心理療法の技法の開発がすすめられる。
(次の記事で、ワーキングメモリと帯状回について述べ、さらに、うつ病、パニック障害の治療法(心理療法)について述べたい)
- (注1)「Clinical Neuroscience」(月刊 臨床神経科学)、中外医学社、2005 Vol.23 No.6、619頁。「前頭前野とワーキングメモリ」舟橋新太郎(京都大学教授)。