帯状回の神経科学(7)

帯状回・ワーキングメモリや感情の抑制(2)=ワーキングメモリの「保持」と「処理」/容量
 =うつ病や不安障害(パニック障害、PTSD、対人恐怖など)治す心理療法(マインドフルネス、自己洞察瞑想療法)の検証

 次の続きです。  ワーキングメモリ(作動記憶、作業記憶=ごく短期の記憶機能)は、私たちの瞬間々々の精神作用、行動を制御している。そのうち、実行機能が重要である。
 実行制御は、次のような機能である。  この機能をはたすためにワーキングメモリが働くが、それを遂行している部位は、前頭前野であることは、次で述べた。今回は、ワーキングメモリは、前頭前野と帯状回が協調して働くことを理解する。そして、心の病気の治療のための心理療法への応用の道をさぐる。

ワーキングメモリは「保持」と「処理」

 ワーキングメモリは、現在の行動の瞬間に必要な情報を一時的に「保持」し並行して「処理」している。  うつ病になると、他者と会うこと、外出することを嫌がるようになるのは、「会話」に必要となるワーキングメモリがうまく機能しないのも、その理由だろう。

ワーキングメモリは個人によって容量が違う

 うつ病になると、仕事・家事や勉強(学生の場合)ができなくなるが、ワーキングメモリの容量が小さくなっているためであるのも理由であろう。うつ病の場合、薬物療法で寛解になっても、気分や身体症状が回復しても、ワーキングメモリが回復しなければ、人に会うことや仕事はうまくこなせないだろう。
 不安障害の場合も、日常、感情的になることが多いために、ワーキングメモリが小さくなって、仕事に支障をきたしたり、適切な対処法を想起し選択したりすることが苦手になるだろう。
 さらに、どの障害の場合でも、いざという時に、他者を批判する思考や最悪の状況を予期する思考や、誤った処理対策・方法への思考などに、ワーキングメモリの大部分を使ってしまって、適切な対策を想起したり、保持できず、いつもの苦しめる思考、感情、行為のパターンを選択して、苦しみ、障害を持続させ、治ることを阻害するだろう。  

(注)