帯状回の神経科学(8)

帯状回・ワーキングメモリや感情の抑制(3)=帯状回の情動領域
 =うつ病や不安障害(パニック障害、PTSD、対人恐怖など)治す心理療法(マインドフルネス、自己洞察瞑想療法)の検証

帯状回の情動領域と認知領域

 感情を起こすのは、「扁桃体」が中心的な役割をになっているが、そのほかに、帯状回も重要な役割を果たしている。帯状回は、扁桃体と同様、大脳辺縁系に位置する。帯状回は、図(T-2)のように、いくつの領域に区分されて、異なる機能をもっている。特に、感情に関係するのは、前部帯状回吻腹側部である。
 うつ病や不安障害などのついて考察するために、情動領域と認知領域の機能をみる。

情動領域

 この情動領域は、前部帯状回吻腹側部で、24a,b,c野、25野、32野からなる。
 扁桃体は、怒りや不安などの感情(情動)の発現に最も重要な部位である。 扁桃体には、五感覚(視覚、聴覚、体性感覚、味覚。嗅覚)各々の新皮質感覚連合野や前頭葉から直接投射がある。海馬体にもこれらの感覚連合野からの投射があり、また、扁桃体と海馬体の間にも相互に結合がある。(1)
 扁桃体は外部情報のほかに、内部情報として血液内の化学情報を直接に、また視床下部から受け取る(2)。視床下部には、内臓求心性交感神経系などを介して、内臓からの感覚が入力する(3)。
 情動領域は、前頭前野背外側部(9,46野)、ならびに眼窩面(12,13,10野)と連絡がある。(4)
 情動領域は、視床と双方向性の連絡を持つ。また、情動領域から、尾状核や側坐核へ出力がある(5)。側坐核は意欲や活力を出す。
 吻側帯状回(情動領域)と眼窩前頭前野からは、視床下部ー視床ー扁桃体の情報を統合し処理した後に、その司令を下行性に扁桃体および視床下部に戻している。 (6)
 25野から孤束核へ、24野から中脳中心灰白質への出力がある(7)。中脳中心灰白質は、情動の表出や情動に伴う自律神経系の反応(心拍数、呼吸、血圧の変化)や 行動面での反応(恐怖の場合のすくみ反応、逃避反応、怒りの場合の攻撃反応)の生起─に関与している。
 こうして、前部帯状回吻腹側部、前頭前野背外側部、眼窩面は外界および内界のあらゆる情報がはいってくるところである。したがって、これら連合野は情報を介する判断ができる。(8)
 外界からと内臓からの感覚、情報が扁桃体に集まり、それが前部帯状回を経由して前頭前野(眼窩回や背外側部)に情報を送り、そこで統合された情報がまた、前部帯状回を経由して扁桃体に伝える。感情となり、この結果は、視床下部から自律神経を興奮させる。感情の発現に、前部帯状回も重要な役割を果たしている。
 ただし、この情動の発現を修飾しているのが、帯状回の「認知領域」である。認知領域が十分抑制できるかどうかが、うつ病や不安障害の発病や悪化に関係している。

(注)

認知領域

(続く)