帯状回・ワーキングメモリや感情の抑制(4)=帯状回の認知領域
 =うつ病や不安障害(パニック障害、PTSD、対人恐怖など)治す心理療法(認知療法、マインドフルネ心理療法など)の方向

帯状回の情動領域と認知領域

 感情を起こすのは、「扁桃体」が中心的な役割をになっているが、そのほかに、帯状回も重要な役割を果たしている。帯状回は、扁桃体と同様、大脳辺縁系に位置する。帯状回は、図(T-2)のように、いくつの領域に区分されて、異なる機能をもっている。特に、感情に関係するのは、前部帯状回吻腹側部である。
 うつ病や不安障害などについて考察するために、情動領域と認知領域の機能をみる。

情動領域

 扁桃体は、怒りや不安などの感情(情動)の発現に、扁桃体のほか、前部帯状回が重要な役割を果たしている。

認知領域

 この認知領域は、前部帯状回背側部で、24a',b',c'野、32'野からなる。この領域は注意や運動の選択、運動のモニタリングなどに関係するとされる。
 この領域は扁桃体との連絡が乏しい。
 海馬は外界の情報を主として視床より受け、また学習記憶の大きな座である。海馬は視床下部へ入力している。海馬はさらに前部帯状回の背側部に入力する。
 扁桃体と海馬は相互に連絡している。両者は基底核(線状体と淡蒼球)に接続して情動行動発現に関与する。ここで重要なことは、扁桃体軸と海馬軸とが前部帯状回ー連合野(OBF,DLPF)に入力して、これらから下行性に基底核を支配していることである。すなわち、情動性および認知性情報が統合され処理された後の判断が、情動行動を発現させていることになる。
 認知領域は運動関連領野と密接に連絡する。OBF,DLPFからの情報を認知領域で受けて、補足運動野ー運動野(4野)に送る。
 視床は種々の体内環境を監視し調節している。視床下部には内臓からの情報が入力する。そして、扁桃体に伝えられる。

 認知領域は背外側前頭前野(DLPF)と眼窩前頭前野(OBF)に相互連絡する。視床ー海馬からの情報は、帯状回背側部とDLPFで統合処理されて、そこからの司令が海馬に到達する。さらにこの司令は、海馬から視床下部へ伝達される。従って視床下部には情動系と認知系の高次の司令が届き、洗練された自律神経性活動と情動行動が発現する。(1)

(注)

視床下部

 情動領域、認知領域ともが視床下部と連絡があるが、視床下部に次のような部位があって、内蔵からの情報が入る。それぞれ(  )の化学物質に反応する。 (1)  認知領域は、痛みにも関与している。24a',b'野は視床のMDvc核、束傍核と双方向性に連絡がある。これらの核は脊髄後角T層からの痛覚入力を中核している(2)。
 消化管からの信号は脊髄神経の感覚ニューロンが受容し、発火すると脊髄後根から脊髄後角ニューロンに信号を伝える。そこから視床ー島ー前部帯状回ー前頭前野に信号が投射され、刺激強度が高い場合か、感覚閾値が低ければ内臓知覚を起こす。過敏性腸症候群の患者では、前部帯状回の亢進がみられる。(3) 

 パニック障害は、認知療法が効果があるものの、就寝中にも発作が起きる人があるので、認知(思考)によらずして、身体の臓器に上記の視床下部に関連する部位の状況に変化が就寝中に起きて、それが、自律神経を興奮させたりして、パニック発作の責任部位(視床下部か?、中脳水道か?)を刺激して、発作を誘発すると考えらえる。
 パニック障害やうつ病を治す心理療法は、こういう過敏になっているところを、意識の用い方、生活の変更や運動(身体と心の運動)で、過敏性を変えていく、または、抑制力を強化する、そういう方向がある。前頭前野、帯状回情動領域・認知領域、扁桃体、PAG(中脳水道周辺灰白質)などのうち、過敏な部位は抑制を、抑制機能は活性化をはかる方向の課題を実行するという方針である。

(注)