病気を治す・目的指向的行動

 =治したいという強い願いを持つ人は治る=前頭前野の働き

 うつ病は、前頭前野の変調もある。前頭前野の機能が損なわれると「目的志向的行動」ができなくなる。
 今回は、この前頭前野の「目的志向的行動」機能をみたい。
(赤字)で、うつ病、パニック障害などのカウンセリングへの影響について指摘したい。うつ病、パニック障害などの人は、病気を治す行動が、治るまでは「目的志向的行動」であるが、前頭前野のこの機能が、うまく機能しないと、カウンセリングさえも、家族がすすめても拒絶し、1回面接を受けても2、3回目で、中断することになる。カウンセラーは、それを予想して、面接に望み、できるだけ継続するように、説明にくふうする。

目標を保持

 目標を達成するためには、その目標をしっかり保持しなければならない。前頭前野が関係している。 (注)うつ病の人の一部には、面接の後、すぐに、「課題を実行すれば治る」という報酬ー行動関係を忘れてしまう人がいるようで、課題を実行しない、面接を中止するということが起きる。これを補うためには、家族が同行して、この報酬ー行動を理解し、記憶し、それをクライアント(患者)本人に毎日、説明して課題を実行するように言い、面接にもいつも同行することである。報酬ー行動(つまり課題の実行→治る)の関係を忘れないクライアントならば、一人での面接でも中断しない。うつ病の場合、前頭前野の機能が障害される場合(すべてではない)があるようである。
 パニック障害だけで、うつ病を併発していない人は、報酬ー行動の結合は損なわれていない人が多くて、よく課題を実行するようである。
 クライアント本人が、課題の実行ー治る(報酬)という関係を保持してもらうためには、面接において、よく説明すること(インフォームド・コンセント)、そのことを書いた資料を与えること(説明だけでは忘れるので、資料を与える)、場合によっては、クライアントの自宅の壁に貼っておけるような色紙などを与える、E−メールで連絡をとることなどがある。


目標(報酬)と行動の結合

 ある目標に向けての行動をするためには、刺激、行為、報酬などの行動要素の間の連合が形成される必要がある。報酬と結びつかない行動は、ある一定の期間継続しない。  動物の場合、報酬は一般的には、食べ物である。だが、人間は、他の報酬が予測・期待される場合にも、行動する。

目的指向的行動

 報酬を予測して行動するのが、目的指向的行動である。  目的指向的な行動が実現するためには、目標を表現して保持し、必要に応じて思い出さなければならない。この機能をはたすのが、前頭前野である。報酬予測は、前頭前野全体、行為との結合は、前頭前野の内側部の機能である。

刺激報酬予測(行為ー報酬関係)行為の実行報酬
  (前頭前野全体に
広がった神経細胞活動)
 (前頭前野内側部に
限局した神経細胞活動)
  

(注)認知療法や自己洞察瞑想療法では、クライアントに課題を与えて自宅で実行してもらうことがある。それは、行動である。この課題を実行すれば、治るだろうという報酬を結合することが困難になっているクライアントは、課題を実行しないだろう。そういう場合には、この療法では、通院方式では、不適応である。入院方式を試みる価値はある。

目的に合う行動を選択して実行

(注)自己洞察瞑想療法では、課題を与える。それは、カウンセリング期間中、治るまで、そのクライアントにとって「行動」となる。従って、クライアントにおいて、その報酬を強調する。「価値保持・価値確認」の技法である。そのクライアントの願い・実現したい価値(たとえば、就職したい、復帰したい、など)を明確にしてもらう。それを、長期的な価値・願いと位置づける。そういう願いがあるならば、その前に、短期の価値・願いがあると強調する。それは、「治ること、治りたい」ということだ。それを忘れないようにと強調する。そして、「こういう課題を実行すれば、治る、と説明する。報酬期待を明確に理解してもらい、カウンセラーのいないところでも、この「カウンセラーと約束した課題」は報酬(自分の願い=治る)を得ることを忘れないようにしてもらう。
 これが、「自己洞察瞑想療法」の中の、「価値保持・価値確認」の技法であるが、これをカウンセラーが努力しても、放棄してしまうクライアントもいる。そこを補うプログラムを研究・開発すべき余地はある。