人にあいたくないうつ病=前頭前野のおとろえ

 前頭前野の機能は、思考、創造、他人とのコミュニケーション、意思決定、感情の制御、行動の抑制、記憶のコントロール、意識注意の集中、意欲、喜び、などである。この中に、コミュニケーションの機能がある。
 このうち、コミュニケーションに関わる機能は、脳科学では「心の理論」(ToM)と呼ばれて、研究がすすんでいる。  次の記事で、みたように、うつ病の人は、前頭前野のコミュニケーション(ToM)遂行領域の機能低下が推測されている。そのために、うつ病になった人は、人にあいたくなくなる。「ひきこもり」状況を示すのが特徴である。  うつ病ばかりではなくて、いわゆる「ひきこもり」の人も、前頭前野のToM機能の低下があるために、人にあえないという場合もあるであろう。だから、抑うつ気分のない「ひきこもり」であっても、人にあいたくないということもあるだろう。
 引きこもりやうつ病の人には、薬物療法で効果がない場合、前頭前野のコミュニケーション機能を活性化する手法が効果があるかもしれない。  私どものカウンセリング(心理療法)の技法は、呼吸法を利用して、注意集中法、分散注意法、徹底受容法、機能分析法などを用いて、前頭前野(および、セロトニン神経)の多くの領域を活性化することをねらっている。そのほか、ストレスをあたえない人(家族、公共の場所)にあうこと、グループ・カウンセリング、患者会に参加することを奨励する。
 ストレスを受けるからつらいわけではなくて、前頭前野の機能が潤滑に動かないので、感情を推測したり、会話を交わすことがむつかしくなって人に会うのが、苦手になっている。そこで、うつ病、ひきこもりに理解ある人と、あえて、会うことで、前頭前野が動き(血流が多くなる)、だんだん、スムーズに動き、うつ病が改善していく効果がある。低活性化は、低活性化を持続させる。低活性化の部分は、少しづつ活動させれば、やがて、スムーズに動くようになる。これを応用した心理療法の(血流が多くなることで、細胞の新生やシナプスの増加など脳の中に変化がおきるのかもしれないが、解明されていない)手法である。効果は、人によるが、うつ病の人は、ためしてみる価値はある。