「前頭眼窩野」とコミュニケーション、疲労



 前頭前野は、うつ病や疲労についても、関連があります。そのうちの、 「前頭眼窩野」についての脳の神経科学の研究であきらかになってきたことがある。こういうことが、うつ病、ひきこもりの治療、予防に応用できそうである。

 「あるある大事典」で、こういう。
「人とのコミュニケーションが、少なくなってくると、前頭眼窩野が衰えてきます。」
 うつ病になると、人とのコミュニケーションができなくなる。前頭眼窩野が衰えてきている。

引きこもり→コミュニケーションしない→前頭眼窩野が衰え→うつ病=コミュニケーションできない

 ひきこもりの人は、うつ病になりやすいわけである。こういうひきこもりによるうつ病は、薬物療法で治すよりは、行動療法、心理療法で治すべきである。セロトニン神経に作用する「抗うつ薬」が、前頭眼窩野を正常化するとは限らないからである。

 NHKの「ためしてがってん」では、前頭眼窩野と疲労の関係が紹介された。  「「前頭眼窩野」とは、 目のすぐ奥にあり、主に会話をするときに、相手の気持ちを読み取る、コミュニケーション能力を司る場所。 実は、対人場面で重要なこの場所に、意外な働きがあることが、最新の研究で明らかになってきたそうです!
「前頭眼窩野は、『疲れをとれ!』という指示を出す所でもあるわけです。」  うつ病には、コミュニケーションできないという症状のほかに、疲労感が持続する症状がある。うつ病の人は、「前頭眼窩野」が正常に働かなくなっているのだろう。
 うつ病の予防、治療には、抗うつ薬ばかりではなくて、前頭前野を正常化する行動療法、心理療法を行なうべきである。ごく最近(2000年以後)の神経科学の進展により、うつ病、ひきこもりの予防、治療法も変革をせまられているとみてよい。以前の方法は、通用しなくなっている。
 「うつ病になったら休養を」というのは、古い。「うつ病になったら、行動を」が新しい。アメリカでは、ずっと前から「行動活性化療法」や前頭前野を活性化する作業(マインドフルネス・アクセプタンスなどは、前頭前野の機能)が研究されていたようだ。別に紹介している。
 医者やカウンセラーが、別のことで忙しくて、脳や心の研究の最新の動向を勉強していない。そうして、日本の精神医療、心理療法が遅れている。
 ひきこもり、長期の不登校で、家にいることが多いと、コミュニケーション機能を働かせないので、「前頭眼窩野」がおとろえるおそれがある。うつ病になるおそれ、そして、うつ病にならなくても、将来、社会人としてコミュニケーションをとっていくことがうまくいかず、今度は、対人恐怖になるおそれもある。(もちろん、すべてではない。)  コミュニケーション機能は、人との交流、会話によって成長する。会話の進行によって起きる自分の感情や衝動はある程度コントロールできて、他者の表情、言葉などから、他者の感情、気持ちを推測して、適切に応答していかねばならないから、経験のつみかさねが大切だ。薬では改善しない。ひきこもり、不登校、うつ病であっても、家族との会話、知人・カウンセラーと話す、患者会に参加する、地域の支援者に会う、外出するということが悪化を防止するだろう。そういうことを、本人も家族も理解して協力することが大切だ。