「うつ病」は、前頭前野の変調

 =寛解になっても前頭前野は回復していない

 うつ病になると、前頭前野の機能に変調がおきている。
 前頭前野は、思考、創造、他人とのコミュニケーション、意思決定、感情の制御、行動の抑制、記憶のコントロール、意識注意の集中、注意の分散、意欲(何かしらしようという意欲、目標ある行動へ)、自発性など、人間の精神作用に密接にからんでいる。
 うつ病になると、抗うつ薬が使用されるが、それは、セロトニン神経やノルアドレナリン神経に作用するのであって、前頭前野には、間接的である。薬物療法で、うつ病が軽くなったという段階、「寛解」になっても、前頭前野の機能が回復しているとは限らない。
 前頭前野の機能のうち、コミュニケーション機能について、次の記事にそれを紹介した。 うつ病になると、ここがうまく働かなくなって、他者とのダイナミックなコミュニケーションができない。薬物療法を継続しているような寛解では、こういう前頭前野の機能は十分回復していないかもしれない。  うつ病の患者では、前頭前野の他の種々の機能も衰えていることが報告されている。それらは、その脳部位が萎縮したのか、ミトコンドリアや受容体などの機能のおとろえなのかどうかは解明されていないようだが、「萎縮」がある部位もあると報告されている。  うつ病の人が、薬物療法などで寛解(抑うつ気分などが改善されて軽くなる。完治ではないが)に至っても、なお、前頭前野に脆弱性が残っていて、前頭前野の機能の回復が不十分であると、ストレスのあるところへ復帰すると、うまく考え、行動できないので、苦しみ、容易に再発するのは推測される。薬物療法だけで、治療を受けた、うつ病患者は、再発が多い。再発しないのは、再発をおそれて、小さく生きる(発病前のように、意欲的、積極的な生き方を後退させる)からともみられる。もとどおり、いきいきと、大きく行動するには、 前頭前野を活性化させるようなことをするのがよいようである。抗うつ薬を生涯、服用するようでは、びくびくして、発病前のような、はつらつさを感じないに違いない。