NHK 女性の”うつ”(4)
7月24日、NHKが、「女性の”うつ”」を放送しました。午後10時から11時30分の放送の後、0時40分から2時まで。
7月29日午後8時から、「総集編」が放送されました。
以前の繰り返しが大部分でしたが、ゲスト出演者の、対話が、24日の生放送のあとの部分は、今回、新しいものでした。
3組のご夫婦が、両方ともうつになってしまったかたが出演しており、薬物療法を何年も受けているのに、治っていない(森岡さんを除いて)ことが告白されました。そういう夫婦に対して、よいアドバイスもなく、せいぜい、「二人の距離を置く」、つまり、一人だけの時間を持つというものでした。あきれました。
(あきれました)の理由は
番組のテロップで、うつ病になった妻に対して夫の理解がないという悲しい訴えが多数紹介されましたが、この悪い傾向に「お墨つき」を与えてしまったような、結びになってしましました。距離をおかれた妻は、孤独感・見放され感を強めて自殺、離婚への決意を強めてしまいのではないかと不安です。夫もうつ病になってしまったのは、妻のせいではなくて、仕事のストレスのためであることが大きいはずです。「妻がうつ病になったら、夫は距離をおくべし」というような誤解、偏見をNHKが作ってしまったのではないか心配です。そうではなくて、一方がうつ病になったら、夫婦でカウンセリングを受けて、うつ病に追い込む心理、治すための心理を学び、ささえあっていけば、治るはずです。うつ病のカウンセリングが遅れている。
3つのご夫婦は、次の様子でした。
- (1)萩原流行さん、摩侑美さんご夫妻の”うつ”
別の記事にご紹介しています。まず、摩侑美さんが、うつ病になってから、18年。奥さんのうつ病に気を使って仕事もこなしているうちに、流行さんも、うつ病になる。もう15年。お二人とも、薬物療法を続けているのに、治らない。
- (2)奥山亨さん(28)、愛さん(26)
産後うつ病。子どもは今、6歳。その子を産んだ直後から、うつ病になり、薬物療法を受けて、6年、まだ治らない。夫の亨さんが、家事を手伝う。去年(2005)、店長に昇進、いそがしくなった。つらくても、いえない。はきだすところがどこにもない。夫婦がぎくしゃくしてきた。今年、7月、夫もうつ病になった。二人とも、治らない。夫は、しばらく、奥さんと離れて、実家に帰ってみたいと思う。うつ病になった妻をささえて、自分までうつ病になった。自分の言葉で、妻が自殺しようとすることが何度もあった。自分がそばにいると、かえってまずいから、少し距離を置こうかーーー。
- (3)森岡さんご夫妻
夫と都会で鉄工所を経営、妻も、経理や現場の手伝い。子どもが2人いる。さらに加えて、妻は、コンビニのパートを始める。仕事、家事、子育てで、睡眠3ー4時間。ついに、妻は、うつ病に。治らず、そのうち、夫まで、うつ病になる。
そこで、都会から田舎に移住した。自然豊かな環境で、4人で、経済的に最低限度で、生きていけさえすればいい。子を大学にいかせなくてはいけないとは思わない。どうしても、いきたければ、何とかするだろう。こちらは、完治されている。
以上の3組、アナウンサーの質問や番組の構成上は、みな、治っていないという印象を受けたが、森岡さんは治っておられる。HPの体験記(別記事でご紹介します
→こちら
)に書いておられるが、抗うつ剤や安定剤を飲むのをやめて、臨床心理士のカウンセリングを受けるようになってから
急速に良くなっていったという。やはり、カウンセリングでも、治るという好例である。薬物療法で長引く人は、ぜひ、カウンセリングを受けるべきだ。
あとの2組のご夫婦は治っておられない。テロップでも、治らない人の苦しみが次々と流された。最後近くの、アドバイスは、「二人の距離を置く」だった。
テレビに臨床心理士が出ないのも、奇異に感じた。
日本のうつ病の医療は遅れている。アメリカから心理療法をこれから輸入するとして、うつ病の治療技術(心理療法)は、アメリカよりも、20年遅れていくでしょう。これからも、10年は、こういう方たちは、苦しみ続けるでしょう。このお3組のような方は、社会の仕組みの問題ではないです。薬物療法を受けることができています。経済的にも、薬代金を払うことができます。治療法がない、薬物療法しかない、この問題です。医療技術の遅れです。自殺の増加には、種々の要因がありますが、このケースは、自殺されてはいませんが、うつ病の治療法の遅れというのも大きな要因です。長引いているうちに、うつ病がひどくなり、自殺する人が多いのです。
心理療法もアメリカでは、成功しているのですから、これも普及させるべきです。医者や臨床心理士は、他の領域で忙しいようです。そういうかたたちがやらなければ、他の人材がやればいいでしょう。