うつ病になりやすい性格

 ひところ、全国で中学生の自殺が続いた。中学生にもなると、責任感がめばえ、種々の理想や基準を描き、他人の眼を意識するようになる。いじめであれ、他の原因であれ、ある『性格』の持ち主は、自分の思いどおりにならない事が起こり、悩みを解放することができないと「うつ病」になる。

うつ病になりやすい性格

几帳面な性格

 うつ病になりやすい性格がある。次のような性格の人がうつ病になりやすい。  このような性格の裏には、一定の「基準に執着する」という性向がひそんでいる。このような人は、仕事、自分、他人、環境などに対して、目に見えない基準・固定観念(禅では[無縄]という)を持ちだし、いつも意識的、無意識的に、自分の基準と比較し、心に葛藤を起こす。

(注)

一見利点であるが自縛

 このような性格は、通常は、長所であり、利点である。ものごとが順調で、その人の基準を満たしていられる間は、問題は表面化しない。世の中や同僚や近隣の人より、一般的には、ある面では、すぐれているという自負心をもって生きている。すると、正義感、責任感が強いから、少し大きな出来事、難しい仕事があり、自分が責任をまっとうしていないような気分におそわれると、自分を責め、うつ病になっていく。
 このような性格は、自分にも厳しく自分を責めるが、他人にも厳しいので、環境が変わり、自分の思いどおりにならない(すなわち基準とあわない)ことが起きると、他人や環境を責めて、葛藤が起き、やはりうつ病になっていく。仕事が変わる、人事異動による新しい対人関係、昇進、退職、引っ越し、グループの責任者への就任などの出来事において強く表面化する。
 また、「気が小さい」というのもうつ病になりやすい性格だという。このような人も、自分の希望、理想などを持っている(すなわち基準をもつ)が、気が小さいために、よくその希望を達成できないことがある。すると、自分を責め、現状を嫌い、やはりうつ病になる。

疲れからうつ病、自殺

 阪神大震災の復興のため、都市計画事業を担当されていた市役所職員が自殺された。市長の話では「国など関係機関への働きかけなどで精力的に職務に当たっており、疲れていたのかもしれない。」という。重職であり、困難な仕事であり、自分や被災者の希望どおり事がすすまないであろう。責任感が強いと、自分を責めることになりやすい。また、大手広告代理店の元社員がうつ病になり自殺したのは、過労死だとして、東京地方裁判所が会社に損害賠償を命じた。その後、同様に過労による自殺も多い。肉体的疲労からも「うつ病」になることがある。
 精神的に疲れている場合うつ病になりやすいことを、本人も家族も自覚しておき、配転を願う(自尊心を傷つける場合もあるが、命には変えられない)ことも勇気をもって考えるべきである。本当は、職場の上司も「うつ病」について知っていて、部下が疲れているような場合、休ませるなどの配慮をしてくれればよいのだが、「うつ病」について、知っている人はあまり多くない。本人も知らないし、責任感から仕事を手抜きできず、疲れて、うつ病になり、自殺する。会社も「うつ病」とストレス解放について社員教育をすべきではないだろうか。

疲れたら病院へ

 うつ病になると、正常な判断ができず、自殺願望がおこる病気だから、「自殺するより、配転させてもらおう。だめなら休職、退職すればいい。」という正常な思考はできず、自殺してしまうことがある。退職すれば家族が困る、などと思って頑張っているうちに、「うつ病」になって自殺するから、本人も家族も精神的疲れには、くれぐれも注意して、早めに医者(内科、神経内科、精神科など)に相談すべきである。「うつ病」は軽いうちに治療すれば、治るという。薬物療法で治らない場合には、心理療法がある。「うつ病」に詳しい病院にゆくべきである。

自己洞察瞑想療法で予防を

 自分も精神的に疲れやすいとか、上記のような性格だという人は「うつ病」の発病、再発防止のためにも、自己洞察瞑想療法をやってはいかがであろうか。 これをやっていれば、うつ病になるほどのストレスからは解放される心を身につけることと思う。
 最近、有田秀穂教授(東邦大学医学部)の生理学の研究によれば、弱ったセロトニン神経が、呼吸法で活性化され、そのことによって、種々の心の病気が治癒することがわかってきた。うつ病である患者が、呼吸法を実践すれば、セロトニン神経を活性化させ、うつ病を治癒させる生理学的根拠が解明されてきた。