老人とうつ病

 うつ病から老人が自殺することが多い。

悩みが多いからうつに

 老齢になりと、配偶者に死なれて残された人が1年以内に自殺することがある。家族が老人に冷たい扱いをするとか、病気や傷害その他何かの悩みをかかえるとか、生きがいを喪失するとかの問題をかかえていると、いつの間にか、うつ病になっていて自殺してしまう。
 老人が「死にたい」という言葉を家族にもらしていたのに、うつ病の知識がない家族は、死にたいというのは老人一般の特徴だと軽く思っていると、実はうつ病であって、自殺してしまう。親や配偶者に自殺されると、残された家族には後悔が残り、深い心の傷をおわなければならない。家族の亀裂が生じることもある。特に、後にうつ病ではなかったのかと知った時の無念さは、長く深く残る。
 うつ病は、自律神経の失調から身体症状もあって、あちこち身体の不調を訴えることがあって、内科医などの診察を受けていることもあるが、うつ病に詳しくない医者では、うつ病が見落とされてしまうことも多い。

老人のうつ病

 老人のうつ病も「うつ病」一般の症状を示すが特に次の特徴がある。  特に身体症状は、食欲不振、不眠、口の渇き、便秘など愁訴が多い。症状は頑固で内科医に通院してもなかなか治らない。根本の病気である「うつ病」の治療をしないからである。精神面では、不安、焦燥感が強い。

うつ病の治療

 そこで、老人の自殺を防ぐには、身体症状がなかなか治らない場合、死にたいという言葉をいう場合には、うつ病を疑い、それに詳しい医者にすぐ相談しなければならない。遅れて自殺されないよう、しないよう(これを読むあなた)、くれぐれもよく理解しておきたい。

うつ病の予防

 うつ病の治療には、薬が使用されるが、心理療法、心理的支援も重要である。生きがい喪失、配偶者喪失、家庭が冷たいなどの原因がある場合、一時的に薬で軽くなっても、精神的問題が変化していなければ、また再発するからである。医者も「気分転換」をはかることをすすめる。そんな時、呼吸法もためして下さい。
 呼吸法を中心とした集い、居場所もいいかもしれない。老人が楽しく実践し、座談しているところがある。特に、うつ病に理解のある指導者のいる会では、うつ病の予防になる呼吸法などを指導し、悩みがひどくなった場合、カウンセリング・相談を受けてくれるだろう。
 また、坐禅もいいだろう。禅は日本文化に深く関わっているので、坐禅から日本の伝統文化への導きで、茶道、絵画、陶芸、小説、能鑑賞など芸術を楽しむ趣味ができるかもしれない。老人は、時間があるのだから、このような深い芸術に接し、こころ豊かな老後を楽しんでいきたい。そうすればうつ病、自殺を防止できるであろう。