うつ病=HPT(甲状腺)系の機能不全


 うつ病になった人は、HPA系(視床下部ー脳下垂体ー副腎皮質)の亢進と負のフィード バックの機能不全がみられる。
 →HPA系の亢進、コルチゾールの負のフィードバック機能不全
 うつ病患者には、甲状腺系(HPT系)の機能不全もみられる。
甲状腺ホルモンは、HPT系(視床下部ー脳下垂体ー甲状腺)のループを形成している。視 床下部の甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)が門脈系に分泌されると、脳下垂体から 甲状腺刺激ホルモン(TSH)が分泌される。それが全身循環によって甲状腺に達し、甲状腺 ホルモンの分泌をうながす。そして、甲状腺ホルモンは、負のフィードバック機構によっ て、上位のホルモンの調節を行う。甲状腺ホルモンの量によって、視床下部の刺激は抑制されたり、活発になったりする。健常な場合には、亢進しつづけることがないようになっている。
 うつ病の患者には、このHPT系の異常がみられる患者がいる。  このように、うつ病患者の一部には、甲状腺にかかわるHPT系の異常がみられる。
うつ病ではない「甲状腺機能亢進症」と「甲状腺機能低下症」には、次の症状がある。  うつ病にも、次のような、種々の精神症状、身体症状があらわれる。

精神症状(T軸) 身体症状(V軸)  うつ病の症状は多様であり、うつ病の固有の障害部所は何であるのか、わかりにくいが 、うつ病の症状のうちには甲状腺、HPT系機能不全による症状と重なるものが多いことがわかる。うつ 病は、甲状腺、HPT系の異常も深く関係していることが推測できる。
 抗うつ薬を投与すると、こういう症状も改善していくが、効果がない患者もいる。
 抗うつ薬だけでは効果がない症例に、甲状腺ホルモン補充療法を付加すると、効果のあ る症例もあるという。(参考文献の1040頁)

うつ病の心理療法

 うつ病は、HPT系の機能不全のような症状も、薬物療法、心理療法によって、改善する ことがある。一体、どういう機序で改善するのだろうか。
 うつ病は、治療しないと治りにくいが、HPT系ならば、TRH受容体のダウンレギュレーシ ョンが、セロトニン神経ならば、自己受容体の増加が、前頭前野ならば何かの(いくつか の説がある)機能不全が、起きていて、何も治療しないと、その変調が回復しないためだ ろう。薬物療法や心理療法を加えると、治るということは、それによって、障害されてい た機能が修復されることになる。
 甲状腺関連では、HPT系の視床下部には、セロトニン神経が軸策を伸ばしており、療法 によってセロトニン神経の活性化がもたらされて、視床下部に影響して、HPT系の変調を 回復させるのだろうか。

参考記事