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AERAムック「職場のうつ」
=「復職のための実践ガイド」
AERAムック「職場のうつ」(6月10日発売、743円+税)が発売された。副題が「復職のための実践ガイド」である。
うつ病になり、全く薬物療法のみの治療で、寛解になった人が、慣らしを行なわず、いきなり、職場復帰をすると5人に一人は、再発するという。そこで、復帰にむけて、徐々に準備していくプログラムを行う病院、NPOを紹介している。
次のような内容である。
(1)本人編
- NTT東日本関東病院の「職場復帰援助プログラム」
週4日、午前の、デイケア・プログラムがある。週1回は、集団認知療法。
- メディカルケア虎の門の「リワークカレッジ」
週5日、午前、午後の、デイケア・プログラムがある。
復職後の再発しやすい3カ月の期間、「集団認知行動療セミナー」がある。体験談もある。
- NPO法人 MDA(うつ・気分障害協会)の「就労プログラム」
よく、テレビで紹介される山口律子氏の団体のプログラム。2つのプログラム。体験談もある。
- オープンセミナー=「再発予防・症状自己管理」「認知療法」などのセミナーや「精神科医による講演会」など。
- キャリア理論=「人生における仕事のウエイト」「何のために働くのか」といったテーマを通じて、自分自身を再構築する。認知行動療法を用いて、職場でのコミュニケーション術を体得するプログラム。
オープンセミナーの参加後、希望者は、「就労プログラム」に参加する。
ただし「参加条件は厳しい。幹部候補の正社員を対象している」「大学卒以上」「事務系・営業系・技術系開発研究職・専門職に限られ、書類選考や面接をクリアしなければならない。」
復職後も、毎週土曜日に集まり、再発防止に努める。
このほか、
- 全都道府県にある地域職業センターの「リワーク支援」。民間企業の休職者のための支援。カウンセラーが事業主、主治医と連絡をとりながら、復帰を指導する。
- 自分で実践「一人デイケア」。自分一人で復帰をめざす人のための方法。
(2)家族編
次に、患者の家族へのアドバイス。
- (1)温かく寄り添い「冷静」に支える。家族の体験談もある。
- (2)家族会のすすめ。家族も大きな精神的負担をかかえやすい。一人で抱え込まず、気持を共有し、情報を得る。
(3)職場編
社員がうつ病になった時、企業側がどのような支援をすればよいか、についての参考例。
- 各会社で「職場復帰支援プログラム」を策定して、それに応じた体制を整え、実施する必要がある。EAP(従業員援助)プログラムを提供する団体のサービスを受けるのも、一つの対策。
- 自前で、専門機関を利用できない中小企業は、事業場以外の資源も利用する。地域産業保健センター、産業保健推進センターは、基本的に無料で利用できる。
ほかにも、利用できる資源がある。
- ルポ「教育現場のうつ」=先生を追い詰める「問題親」が多い。こうしたことで、うつ病になる教師を支援するには。校内でのささえあい。外部支援体制の確立。
ほかの支援
そのほか、次の情報がある。
- うつ病専門の病院「ストレスケア病棟」を持つ病院14のリスト。大阪の「関西記念病院」、東京の「西八王子病院」、福岡の「不知火病院」が詳細に紹介されている。
- 頼れる「地域」の専門医、全国の病院リスト=北海道・東北の9か所、東京・関東の29、名古屋・中部の14、大阪・近畿・中国の20、四国・九州の15の病院やクリニックのリスト。
- 治療法
- 「五月病をあなどるなかれ」
自分で軽くする方法として、簡単なアドバイス。
- 自宅で実践「一人デイケア」
- 呼吸法、筋弛緩法、ハーブティー、アロマテラピー
以上が、内容である。うつ病になって、復帰できない人のために必要な基礎情報が網羅されている。
もちろん、このほかに、新しい心理療法が研究されているので、上記の病院、療法を試しても、治らない場合には、さらに、他のアメリカ生まれの新しい心理療法(マインドフ
ルネス心理療法やCBASPなど)や、新しい薬も研究されているので、そのうち、提供する病院、団体がふえるでしょう。自殺対策基本法が成立し
たので、さらに、治療法の研究や支援対策がすすむでしょう。
さらに、これは、「職場のうつ」であるから、これに該当しない「うつ病」の方(たとえば、主婦のうつ病、育児うつ病、学生、さらに、復帰以前の難治性うつ病など)には、ピタリとは来ないでしょう。さらに、別のガイドブックが望まれます。