再発多いうつ病(1)
うつ病は6割再発
「こころの科学」125号が発売された。特集は、「うつに気づく」である。うつ状態の早期発見、早期治療の大切さが繰り返し、強調されている。この方針は、今後も継続するべきである。抗うつ薬による治療があるので、治る(だが、再発が多いことは、後述)人が多いのだから、治療を受けないでいて、自殺されるのは防止したい。だから、早期発見、早期治療の重要さを訴え続ける運動は、継続すべきである。
本書では、インターネットの利用にも、触れている。次のように、うつ病は、治るから、治療を受けることの重要さを訴えている。
うつ病は治る病気です
「うつ病は治る病気です。
しかも治療は比較的簡単です。薬を中心とした治療で、8割以上の人が2-3週間 で回復に向かいます。つまり、治療さえすれば、うつ病は大した病気ではないのです 。ただ一番の問題は、うつ病の人の半分以上が治療を受けていないことです。」
だが、何事も、ニ元観は、「認知のゆがみ」である。これのみを強調していれば、抗うつ薬で治らない人への支援が無視される。
治らない人も多い。上記の言葉をよめば、空しさを感じる患者も多いだろう。「薬物療法で、私は治っていない」と思う人が多いのだ(60%が再発、さらに、ほかに、3回以上、再発する人がいる)。
治療を受けても治らない人が多い。薬物療法で治らずに、自殺していく人が多い。薬物療法だけで治るのならば、自殺が3万人以上にはならない。政府も知っているから、10年後でも、2万5千人までしか、減少させられないとしている。
上記の楽観的な言葉は、「まず、抗うつ薬の治療を受けてもらおう」という、治療へのいざないと肯定できる。だが、治らない場合の、ほかの治療法が遅れている。
再発が多い
本書でも、再発が多いことを知らせている。(ここでは、専門的すぎる部分を、途中、いくらか省略する。)
「うつ状態・うつ病(以下併せてうつ病と」記す)は往々にして再発する。(一部、省略)
大うつ病性障害・単一エピソード(すなわち初発)の患者の少なくとも60%が2度目のエピソードをもつことが予測される。エピソードを2回もったものが3度目のエピソードを持つ可能性は70%で、エピソードを3回もったものが4度目のエピソードをもつ可能性は90%である。」(1)
この2つの事実から、こういうのが妥当であろう。
うつ病は、薬物療法で治療すれば、寛解にいたる人が多い(本当に80%か?、実際には、もっと小さいのでは?)。しかし、完治したというわけではなくて、脆弱性が残っている可能性があり、薬物療法で治った人でも、60%くらいは、再発している。その後も、再発を繰り返す人も多い。
こういう事実が現実であるから、うつ病が薬物療法でも治らずに、やがて、自殺する人も多い。自殺の割合が日本で多いのは、薬物療法のみが宣伝、教育されて、心理療法が重視されないからだろう。薬物療法で効果がない人は、心理療法を受けてください、という教育、宣伝がされない。また、そういう心理療法を受けられる病院が少ない。薬物療法以外の心理療法の研究を重視すべきだ。
だから、現状では、うつ病は、まず、抗うつ薬治療を受けることを教育すべきである。さらに、薬物療法では治らない、うつ病、パニック障害、などの治療法の開発、支援の仕組みの構築が重要な課題である。10年後にも、なお、毎年2万5千人が自殺していく。これが、政府の目標である。薬だけでは、うつ病は、治らない人が多い、他の支援が必要であるが、10年後でも、自殺を救済できるのは、5千人程度の減少としている。楽観していない。
だが、もっと、減らすことができないものだろうか。自己洞察法を実行していれば、再発を防止する。自己洞察法は、不快な感情でも、種々の苦悩でも、ひどいことになる先の行程に向かわないような心の洞察(注意集中、選択、制御など)を続けるので、再発防止の効果がある。(これも、油断して実行せずに、不快な出来事があった時に、こだわり続け、否定的思考を繰り返せば、再発する。そうならないように、常に、自分の感情などにこだわあらないような「動的機能分析法」を実践するように習慣づけてもらう。)
- (1)「うつ状態再発の予防と早期発見」群馬大学、大嶋明彦(「こころの科学」125号、特集「うつに気づく」、2006/1、日本評論社、71頁)