そううつ病はミトコンドリアの変調が原因か

理化学研究所脳科学総合研究センター発表

 躁うつ病は、はっきりとした発症メカニズムはわかっていません。  脳科学総合研究センター精神疾患動態研究チームと名古屋大学の共同研究チームは、細胞の中でエネルギーの生産などをつかさどっている「ミトコンドリア」という小器官が関係するのではないか、と考え、ミトコンドリアの機能が正常でないマウスを人為的に作製しました。その結果、このマウスは、不眠症や“躁”と“うつ”の気分の波などの躁うつ病の症状とよく似た行動異常を示すことを明らかにしました。
 これは、ミトコンドリア機能障害が躁うつ病と関連している可能性があることを示しています。現在用いられている躁うつ病の予防薬には、副作用がある、効果が不十分といった欠点がありますが、今回の結果を生かし、より効果的な治療薬の開発につなげることも大いに期待できます。(同センターのホームページ、4/18発表、日刊スポーツ、朝日新聞が報道)


 この研究では、「躁うつ病」についての研究であるわけですが、「うつ病」についても、セロトニン仮説には、疑問もあります。
 うつ病は、セロトニン神経の神経伝達物質の変調だといわれて、セロトニン神経の再取り込みを阻害する作用をする薬物療法が盛んに宣伝されています。しかし、それでは治らない人、再発する人が多いので、セロトニン仮説に疑問を持つ研究者もいるのです。
 抗うつ薬で、セロトニン神経が回復したようになっても、すぐには、うつ病は治りません。セロトニン神経の変調は、間接部位であって、うつ病の症状は、直接には、前頭前野や帯状回、海馬などの機能の衰え、容積減少が推測されるようになっています。
 前頭前野の機能は、次のようなことです。  うつ病になると、こういう機能がおとろえています。この機能は、直接には、セロトニン神経の機能ではないようです。前頭前野や帯状回、海馬などの機能のようです。だから、うつ病は、セロトニン神経の変調というだけでは説明が十分ではありません。抗うつ薬では完治しない人が多いのは、そのせいでしょう。治す標的が間接的であるようです。心理療法のうちの、「うつ病の認知療法」も理論と実際の治るわけがずれている、うつ病への認知療法には限界があるといわれるようになりました。そこで、アメリカでは、うつ病には、マインドフルネスを取り入れた新しい心理療法が開発されてきています。
 こうした中で、ミトコンドリア仮説は、セロトニン仮説一辺倒の医療に一石を投じたものといえます。この研究は、躁うつ病であって、うつ病ではありませんが、うつ病も、ミトコンドリア仮説の方が、根本に迫っているのかもしれないという期待があります。新しい抗うつ薬の開発につながるでしょうか。 ミトコンドリアは、エネルギーの受け渡し、カルシウムの貯蔵などにかかわっているという。  うつ病になると前頭前野や帯状回の機能が衰えているようですが、その脳内のメカニズムは、わかっていないのですが、「前頭前野の」ミトコンドリアの変調かもしれないのでしょうか。帯状回か、海馬か。そのすべての部位か。
 ミトコンドリア仮設が正しいとして、うつ病の場合、どこのミトコンドリアなのか、前頭前野のミトコンドリアなのか。また、ニューロンかグリア細胞のミトコンドリアなのか詳細はわかっていないが。
 セロトニン神経が弱っているのは、うつ病だけではなく、パニック障害の人も、片頭痛の人も、キレやすい子もそうであるのに、うつ病とは、症状に、違いがある。
 この研究がすすめば、心理療法では治せないタイプの「うつ病」、心理療法を受けられない人の「うつ病」の人を治せる可能性があるので、研究が進展することを期待したい。
 だが、うつ病がミトコンドリアの変調だとわかっても、やはり、心理療法の重要性が強調されるべきでしょう。心理的なストレスで起きることが多い「うつ病」には、薬では、どうしても、一部の人にしか効果がないだろう。健常な人でも、心理的ストレスによって、うつ病になるのだが、ミトコンドリア仮説が正しいということがわかって、その薬で一度治っても、ストレスへの心理的対処がうまくいかないと、また、ミトコンドリアの変調をひきおこすのではないでしょうか。いじめられたり、大切な人がなくなったり、夫婦なかが悪かったりしても、うつ病になりますが、薬(だけ)を与えて、いじめ、夫婦なかが悪いことに対処する智慧が変わるでしょうか。うつ病のうち、「心理的な要因で起きる「うつ病」が大部分ですが、それは、心理的な予防法と治療法が重要だと思います。几帳面な人、誠実な人が、特にうつ病になり、自殺していく。うつ病によって、有用な人材が、第一線から退却し、命を絶つ人もいる。自殺率は、日本が特にひどい。うつ病の心理療法の研究開発を推進すべきである。