心理ストレスから病気(HPA軸)


 他の記事にしばしば関係するので、ストレスで悩むことや身体、心の病気になるとは生理学ではどういうことなのか確認しておきます。
 心の病気になる仕組み、心の病気に身体症状がある理由を生理学的な側面を理解しておくと、治療や予防に役にたつ。

ストレス反応

 動物が危機におかれた時、それに対処する戦術に2つの選択肢がある。 交感神経優位の防御反応(攻撃または逃走をとるか)と副交感神経優位の行動制御をとるかである。個体や種のちがい、状況的脈絡により生存率を高めるほうが選択されている。人が種々の行動をとるのも、自分にとって、最もよいと判断した行動を選択している。だが、それが、根本的な問題解決になるわけではない。

ストレス内分泌反応(HPA軸)

 ストレスを受けると、主に2つの反応が起きる。視床下部→脳下垂体→副腎の反応の系列を「HPA軸、HPA系」という。

ストレスと自律神経(交感神経、副交感神経)

心理的ストレスから、交感神経が興奮することが繰り返されると、上記の種々の臓器の興奮、ホルモンの分泌が過剰になり、免疫を抑制し、身体の各種の部分の障害が起きる。 心の病気の場合、交感神経が興奮することが多いので、身体症状が伴うことが多い。
 ストレスを受け続けると、免疫を抑制するので、がんになりやすい。がんになった人が、心理的に絶望すると、それが心理的ストレスとなり、免疫を抑制して、がんが進行して、早く重態になる。がんとなった時、心理的なケアが重要なのはこのためである。呼吸法をとりいれたマインドフルネス心理療法の心得は、このような場合にも効果を発揮するだろう。

痛み・抑うつ

 痛みは、種々の病気に伴うが、ストレス、がん、セロトニン神経、抑うつとも関係が深い。 がん患者に痛みがあれば、抑うつになることがある。長い間、頭痛で悩まされて、痛みどめの薬物療法を受けても治らない、はきけまでともなう「片頭痛」があるが、片頭痛は、腹式呼吸法や、抗うつ薬で治ることがある。セロトニン神経が弱って痛みやはきけを抑制しなくなったためである。
 うつ病に頭痛、胸通などの痛みの症状を伴うことがある。痛み、交感神経、セロトニン神経、抑うつに、次のような関係が明らかになっている。  うつ病の患者に頭痛、胸通などの痛みの症状がある場合があるが、うつ病の軽快によって消失することも知られている。うつ病の人に呼吸法や瞑想(心の観察)をしてもらうと、やがて、頭痛なども軽快する。 心理療法では、痛みの治療をしなくても、うつのカウンセリングをして、うつが治れば、頭痛、胸痛も消失することがある。薬で治らなかった片頭痛が呼吸法で治ることがある。セロトニン神経を活性化するためである。