労災認定基準:精神障害の基準、10年ぶり改定 「嫌がらせ」など追加
厚生労働省は19日、仕事を原因とするうつ病などの精神疾患や自殺の労災認定基準を10年ぶりに見直すことを決めた。会社の合併や成果主義の採用、効率化など働く環境の変化を念頭に、ストレスの要因となる職場の出来事として「違法行為を強要された」「仕事で多額の損失を出した」など12項目を追加。09年度からの認定審査に反映させる予定だ。評価項目の増加により、労災が認定されやすくなるとみられる。
専門家会議が19日、厚労省の原案を了承した。07年度のうつ病などの労災認定は268人(うち自殺81人)で、認定数は毎年過去最多を更新している。
厚労省によると、現行の精神障害の労災は1999年に作成された「心理的負荷評価表」に基づき審査される。労働基準監督署が発病前6カ月に職場で起きた出来事を調べ、評価表に基づきストレスの強さを3段階で判定、業務上の労災かどうかを判断する。「退職を強要された」「(重大な)交通事故を起こした」などの出来事は最も強いストレスと位置づけられている。
今回の見直しのうち「対人関係」については「ひどい嫌がらせ、いじめ、暴行を受けた」が最も強い強度のストレスに追加され、「部下とのトラブル」は軽度から中度の評価に変えられた。
「仕事の失敗、過重な責任の発生等」では、「違法行為の強要」(中度)や「達成困難なノルマ」(同)などが新たに盛り込まれた。
一方、評価する出来事を発症前6カ月に限定している点は今回変えられなかった。過労死・過労自殺問題に取り組む弁護士らは以前から「発症後の出来事も評価すべきだ」と指摘しており、論議を呼びそうだ。【東海林智】
毎日新聞 2009年3月20日
==============
◆新たに評価に加えられた項目とストレスの強度
・ひどい嫌がらせ、いじめ、または暴行を受けた(強)
・違法行為を強要された(中)
・自分の関係する仕事で多額の損失を出した(中)
・職場で顧客や取引先から無理な注文を受けた(中)
・達成困難なノルマが課された(中)
・複数名で担当していた業務を1人で担当するようになった(中)
・研修、会議等の参加を強要された(軽)
・大きな説明会や公式の場で発表を強いられた(軽)
・上司が不在になることにより、その代行を任された(軽)
・早期退職制度の対象となった(軽)
・同一事業所内での所属部署が統廃合された(軽)
・担当ではない業務として非正規社員のマネジメント、教育を行った(軽)
「一方、評価する出来事を発症前6カ月に限定している点は今回変えられなかった。過労死・過労自殺問題に取り組む弁護士らは以前から「発症後の出来事も評価すべきだ」と指摘しており、論議を呼びそうだ。」とのコメントはもっとも。
発症の後、管理職のよるいやがらせ、配置転換など大きなストレスであり、うつ病を悪化させる。