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<第1>否定的な思考の繰り返しからストレスホルモンの分泌
厳しいストレスのある社会情勢のためか、働き盛りの人にも高齢者にも、子どもにもうつ病がふえている。うつ病になると仕事ができなくなったり自殺することもある。なぜうつ病になるのか理解して、予防の対策を実行することも大切である。
なぜうつ病になるか。
ストレスになる出来事がある時、何とか克服できればよいのだが、ストレスが強い場合には解決が難しく、思いどおりにならないことがある。そんな時、「いやだ、いやだ」とか「つらい、つらい」というような思いどおりでないことを苦悩する(不満、将来の不安、つらい過去の思い出し、悲しみ、後悔、自分や他の人を責める、恨む考えなど)の思考を繰り返すことがある。このような思考を繰り返していると扁桃体(感情を起こすところ)が興奮して、その信号が副腎皮質に伝わって、副腎皮質からストレスホルモンが過剰に分泌されるようになる。
<第2>脳のいくつかの領域の神経細胞が傷つく
この過剰なストレスホルモンが血管を通して脳に伝わると前頭前野、海馬、帯状回などの神経細胞を傷つけてしまうと推測されている。うつ病の患者のこういう部位の体積が小さくなっているという研究報告がある。セロトニン神経もおとろえていると言われている。
こういう部位の神経細胞が傷つくと、本来の機能が低下する。前頭前野は仕事などに集中する機能、記憶、思考、対人コミュニケーション、喜びなどの機能を持っている。海馬は主に記憶に関係している。帯状回は意欲や感情の制御の機能がある。うつ病になると、こうした機能の低下が起こる。うつ病になると、そのほか、快感や睡眠の障害、抑うつ症状、鉛様麻痺感(肩や胸のあたりに鉛があるかのような重苦しい感じがして行動することが難しい)も現われることがある。こうした症状があるので重くなると仕事(子どもは勉強)ができなくなり、人とのコミュニケーションが難しくなる。重くなると死にたいという気持が現われて治療がうまくいかず治らないと、実際に自殺する人がいる。
否定的な思考の繰り返しは種々の心理的なストレスから起きる。心理的ストレスによるうつ病が多いが、そのほか、過労、持続する睡眠不足からもうつ病になることがある。
<第3>交感神経の興奮により種々の身体症状も
うつ病になると、胃や腸の痛み、筋肉の痛み、下痢、便秘などの身体症状が現われることも多い(参照1ページ)。これは主として、ストレスによって交感神経の亢進状態が続いて、いわゆる「自律神経系の失調」によって血行不良、種々の内臓の変調を起こしたものであることが多い。うつ病が治らないと、こうした身体症状も改善しないことが多い。
<第4>治療、予防のために呼吸法の実践
うつ病になると仕事ができなくなりますので予防することが大切です。それはストレスが起きた時の心の対処法を身につけること、前頭前野やセロトニン神経などを活性化させる訓練を日課とすることです。アメリカでは坐禅やヴィパッサナー瞑想法を応用したトレーニングによって、うつ病を治療して効果をあげています。
マインドフルネス総合研究所では、呼吸法を多く用いる心理療法(西田哲学のような自己探求と脳神経生理学の研究を参照して)で、うつ病や不安障害の治療や予防の活動を行っています。