「精神科医が続々うつで倒れていく!」
週刊誌「読売ウイ−クリー」が、「精神科医が続々うつで倒れていく!」という記事(1)で、専門の医者でさえも、うつ病になり、それさえも、治せないという「うつ病」医療の問題点を述べている。
いくつかの例を紹介している。要約してみると、
- 都市部の総合病院の精神科医、勤務は週4日、朝の8時半から夜の9時まで。入院患者の容態が悪くなると、週末や日曜日も病院に顔を出していた。ほかにも、郊外の病院で兼務。兼務して1年後、うつ病で退職。
- 精神科の開業医、入院設備がないので、外来のみ。開業して2年、患者が多くなって、うつ病に。自分で抗うつ薬を処方するが、治らず、クリニックを閉鎖。
- 医大病院の女性医師。毎日、100人以上の外来。病棟までみる。うつ病になり、抗うつ薬を自分で処方。大量服薬を繰り返し、なおらず入院。
精神科医の自殺率が高いという。
「統計的な数字はないが、全診療科目のなかで、自殺率は精神科医が最も高い、というのが医師の間では常識となっている。」
精神科医の西城有朋氏が、うつ病治療法の問題点をこう述べている。
「はっきり言って、今の治療法ではうつを完全には治せるとは言い切れません。それを精神科医は一番よく知っている。ところが、患者には必ず治ると励まさないといけない。そのギャップに落ち込んで、自分の内面に問題を抱え込んでしまうところがある。・・・」(西城氏)
うつ病であることをカミングアウトして、治療を進めている医師もいるという。沖縄の精神科医、蟻塚亮二氏は自分の体験を「うつ病を体験した精神科医の処方せん」という本で書いた。青森県で精神医療にたずさわっていたが、36歳の時、大腸がんとなり、うつ病も。55歳で、うつ病が再発。過重労働が続いていた。半年休職、2004年、沖縄に移住。うつ病は次第に回復していった。
精神科医のうつ病を防ぐ対策はないものか。精神科医の大西守氏の意見をのせている。
「「孤立化する現在の診療スタイルを、どうチーム医療に変えていくかが大切」だと指摘する。」
(大田)
日本には、自殺が多いが、うつ病になって治らずに自殺することが多い。そのうつ病を治す医療がこういう問題をかかえている。問題は、うつ病には、薬物療法だけを行なうためだ。その薬物療法がまだ充分ではない。第一、心理的なストレスによるうつ病を、ストレッサーと受けとめかたを変えずに、薬物療法だけで完治させられるかは疑問視される。大西守氏の意見のとおり、チーム医療で、うつ病を治療して、患者のうつ病をきちんと治し、精神科医の負担を減らし、医者がゆとりを持って治療にあたる体制にすべきだ。うつ病や不安障害、依存症などには、心理療法が有効だ。心理療法を提供できるスタッフをチームに加えることが、患者にとっても精神科医にとっても、いいことだ。
(注)
- (1)「読売ウイ−クリー」2007/1/7-14合併号、ジャーナリスト上野玲氏の記事。