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治療法の現状と課題
状況分析
CBASP=アメリカの新しい心理療法
(慢性うつ病の新療法:CBASP)
第5章 変化への動機付けを強化するための戦略
アメリカで開発された慢性うつ病の心理療法の概略をみていく。
第5章のうち、「状況分析」の概要について述べる。
状況分析と対人弁別練習
CBASPでは、行動、結果の因果関係を理解することがよくできない慢性うつ病患者に、
「こうすれば、ああなる」という「形式操作的問題解決法」を練習することを要求する。
「形式操作思考の練習は2つある。」
状況分析(SA)と対人弁別練習(IDE)である。
「これらの訓練は、患者が特定の状況で常々感じている不快感を回避するために必要なことを同定する助けにもなる」(77頁)
状況分析
「最初の練習は、状況分析(SA)と呼ばれる反応ー帰結を認識させる技法によって、治療セッション中で患者の精神病理を明確にして解決するというものである。」(77頁)
対人弁別練習
「2番目の練習は、対人弁別練習(IDE)と言われるもので、治療者の行動と重要他者の行動とを比較するものである。患者はこれまで誤った扱われ方をされてきた場合が多いので、治療者の促進的な行動とかつての経験とを比較・対照することは困難ではない。」(77頁)
(IDEは、99頁、102頁、106頁、第8章に詳述されるー192頁)
状況分析
「状況分析には大きく2つの段階がある:「明確化段階(elicitation phase)」と「修正段階(remediation phase)」である。」(79頁)
「明確化段階において、状況分析は、臨床家と患者の双方に、対人関係面や認知行動面の診断手段として用いられる。患者が明確化段階のステップを進み、社会的出会いの諸側面に彼ら自身がどのように貢献しているかを記述することで、対人関係、認知、行動面での病理のさまざまな形が明らかになってくる。
修正段階においては、病的な行動が変化のための標的とされ、患者の新しい行動がその状況を期待した結果に変化させる。」(79頁)
明確化段階における状況分析の6つの質問
「治療者の6つの促し質問への答えが、明確化段階における状況分析の中核を構成する。質問とは次のものである。
@その状況で何が起こったかを述べてください。
A起こったことについてのあなたの「解釈」を述べてください。
Bその状況下であなたが「何をしたか」述べてください。
Cその出来事があなたにとってどういう結果をもたらしたか、すなわち「現実の結果」を述べてください。
Dあなたはその出来事がどういう結果になってほしかったか、すなわち「期待した結果」は何であるかを述べてください。
E期待した結果は得られましたか?(なぜ得られたか/なぜ得られなかったか)
」(80頁)
「現実の結果」は、AO ( Actual Outcome )といい、「期待した結果」は、DO ( Desired Outcome )という。
修正段階における4つの質問
「修正段階は、臨床家がxxの状況行動の再検討を援助しながら先導する。xxは次のような治療者の促し質問に従いながら、1段階ずつ行動を評価する状ように促される。
@期待した結果を得るためにそれぞれの解釈がどのように役に立ちましたか。
A期待した結果を得るためにあなたの行動はどのように役に立ちましたか。
Bこの状況分析をやり終えたことであなたは何を学びましたか。
Cこの状況で学んだことは、他の似たような状況でどのように当てはまりますか。
」(82頁)
「このように、状況分析は患者に、考え方と行動方法を一部変えれば自分自身で問題を解決できることを示すことで、問題となっている対人関係の出来事を解決する手助けする手助けとなり、その苦悩を軽減させる。」(83頁)
練習による3つの効果
状況分析の練習を繰り返すことで、3つの効果をもたらす。
「理想として、練習はxxにとって次の3つの効果をもたらすであろう。
@自分の行動が「期待しない」現実の結果(AO)をもたらしたことを認識する
A自己主張的な行動が期待した結果(DO)を達成可能なものにすることを理解する
B将来、いかにしてストレスフルな結果を避ければよいかを明確に理解して明らかな安堵を示す。それは、自己主張をしないことがいかに対人関係上の苦悩をもたらすかの学習として結実したものである。」(86頁)
「慢性うつ病の精神療法〜CBASPの理論と技法」
原著者:ジェームズP・マカロウ、
監訳者:古川壽亮(名古屋市立大学)、大野裕、岡本泰昌、鈴木伸一
発行:医学書院、2005/11/1、定価:5775円
CBASP=Congnitive-Behavioral Analysis System of Psychotherapy; 認知行動分析システム精神療法
(慢性うつ病のみに開発された精神療法である)